教育ローンと奨学金、どっちを利用すべき?各々のメリットデメリットを徹底解説

教育ローンと奨学金、どっちを利用すべき?各々のメリットデメリットを徹底解説
教育ローン

この記事を読まれている方の中には、「子供の教育資金について悩んでいる…」という方も多いのではないでしょうか?

大学四年間の授業料や入学金を含めると、最低でも500万円以上かかるといわれている昨今。

教育費を貯蓄でまかなえるならまだしも、ローンや奨学金などの手段を講じないと教育費を用意できない家庭が多いのも事実です。

ただ、教育ローンと奨学金では各々利用する条件も変わってきますので、どちらを利用すればいいのか悩んでいる人も多いと思います。

そこで今回は、教育ローンと奨学金のメリットとデメリットを整理し、家庭の事情によってどちらを使うべきなのか、いくつかのアドバイスをお届けしたいと思います。

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教育ローンと奨学金の3つの違い

奨学金,どちらを利用

まず、教育ローンと奨学金とでは一体何が違うのか、その「3つの違い」からお伝えしていきます。

1.金利が違う

一つ目は金利の違いです。

この後で各々の貸付金利について詳しく解説しますが、奨学金の方が圧倒的に金利が低く、利用しやすい条件になっています。

一方、教育ローンは金利が高いから…と言って「利用しづらいか」と言うと一概にそうでもなく、教育ローンにはそれなりのメリットもたくさんあります。

教育ローンと奨学金の比較については、この後詳しく解説していきます。

2.利用できる人の年収条件が違う

二つ目の違いは「利用できる人の条件が違う」という点です。

主に教育ローンは「親が融資を受ける」、そして奨学金は「学生本人が融資を受ける」ということになりますが、各々利用する場合の収入条件が異なります。

なお、結論を先に申し上げると、教育ローンは年収が高くても利用できますが、奨学金は高所得者の方は利用できない仕組みになっています。

逆に、奨学金には低所得者でも利用できる様々な仕組みが用意されています。

3.返済開始時期が違う

三つ目の違いは、返済の開始時期が違うという点です。

まず、教育ローンは借り入れをした翌月から返済が始まりますが、奨学金の場合は学校を卒業するまでは返済の必要はありません。

奨学金の場合、学生本人が卒業し収入を得るようになってから返済をはじめますので、かなり余裕を持った返済が可能です。

ただ、奨学金が「余裕のある返済ができる」ということは、それだけ返済期間も伸びるということですので、将来返済不能に陥ってしまうリスクもそれだけ高くなります。

教育ローンのメリットとデメリット

では、ここからは教育ローンと奨学金の各々の「メリット」「デメリット」について、詳しく解説していきたいと思います。

まず、教育ローンについてです。

メリット「教育ローンは年収が高くても利用できる」

教育ローンの一つ目のメリットは「年収が高くても利用できる」という点です。

ちなみに、下記は奨学金の年収の上限金額を記載した表ですが、夫婦二人+子供二人の4人家族の場合、無利子での第一種奨学金の場合、年収が680万円以上だと利用する事はできません。(自宅通学の場合)

世帯人数通学形態第一種奨学金(平成30年入学者の最高月額の対象)の場合第二種奨学金の場合第一種・第二種併用の場合
2人自宅712万円1,039万円712万円
自宅外779万円1,086万円779万円
3人自宅603万円1,012万円603万円
自宅外670万円1,059万円670万円
4人自宅680万円1,096万円680万円
自宅外747万円1,143万円747万円

また「教育ローン」とひとことで言っても、「国が取り扱う教育ローン」と「銀行などの金融機関が取り扱う教育ローン」に分かれます。

銀行などの金融機関が取り扱う教育ローンの場合は、特に年収の上限金額は設定されていませんので、高所得者世帯でも教育ローンは利用できます。

しかし、その一方で銀行の教育ローンは最低年収が200万円以上なければ利用できないローンが多いため、それを下回る低所得世帯の方は残念ながら銀行の教育ローンを利用することはできません。

(※教育ローンを利用するなら、銀行か国の教育ローンか?という点については、この後の見出しで詳しく比較します。)

メリット「子供に返済の負担をさせずに済む」

教育ローンの二つ目のメリットは、なんといっても「子供に教育費の負担をさせずに済む」と言う点だと思います。

たしかに、大学進学は義務教育ではありませんので、基本的には子供が学びたいのであれば子供の責任で進学させる…という親もいるかもしれません。

しかし、奨学金を利用した学生の中には、卒業してから返済不能に陥り、大きな借金を背負ったまま返済を続けなければならない…というケースも少なくありません。

そういった将来のリスクを考えると、やはり親が一時的に教育ローンを借りておき、親が働ける間に返済をしてしまうというのが、最もリスクが低い方法と言えるかもしれません。

デメリット「奨学金と比較して金利が高い」

つぎに、教育ローンのデメリットについてです。

教育ローンのデメリットの一つ目は、やはりなんといっても奨学金と比較して金利が高いという点に尽きると思います。

以下の見出しでも触れていますが、金利が低い順に奨学金<国の教育ローン<銀行の教育ローンとなります。

デメリット「所得が多くない人は利用できない」

教育ローンの二つ目のデメリットは、先ほども申し上げた通り「所得が多くない人は利用できない」という点になります。

銀行の教育ローンの場合、貸付条件は各々の金融機関により異なります。

中には最低年収の条件が設定されていないケースもあるようですが、ほとんどは最低年収が200万円以上ないと利用することはできません。

また、最低年収の条件が公表されていない銀行教育ローンの場合も、銀行の審査と保証会社の審査の二重審査が行われるため、審査基準はかなり厳しくなることが予想されます。

そのため、収入が不安定な家庭や低所得世帯の場合は、ほとんど銀行の教育ローンは利用できないことになります。

教育ローンを利用するなら銀行?それとも国の教育ローン?

つぎに、教育ローンを利用するなら銀行の教育ローンかそれとも国の教育ローンを利用した方がいいのか、各々を比較してみたいと思います。

先ほども簡単に触れましたが、教育ローンは銀行や信販会社、そして国の金融機関が各々取り扱っていますが、金利や限度額などの条件は異なってきます。

以下の通り、各教育ローンの基本的な貸付条件を表にしていますので、一度ご覧いただければと思います。

貸付設定日本政策金融公庫国の教育ローン銀行の教育ローン
貸付金利1.76%(固定金利)
※母子家庭や年収200万円以下の場合は、金利が1.41%に下がる。
1.5%~3.98%(都市銀行の場合は、ほぼ3%~4%前後の金利が適用される)
限度額子供一人につき350万円1万円~3,000万円
(例:三菱UFJ銀行ネットDE教育ローンの場合、30万円~500万円)
融資までのスピード最短20日程度最短2日~2週間
(メガバンクの場合は、ほぼ4営業日が多い)

以上で比較してみると、金利面で考えるなら断然「国の教育ローン」、そして高収入で且つ高額の教育費を工面する場合は「銀行の教育ローン」という使い方が賢明と言えます。

奨学金のメリットデメリット

つぎに、奨学金を使う場合のメリットとデメリットについても整理していきましょう。

メリット「金利が低い」「又は無利子で借りられる」

奨学金のメリットの一つ目は、なんと言っても「借入の金利が安い」または「無利子で借りることができる」という点に尽きます。

ちなみに、奨学金は無利子の「第一種奨学金」と、有利子の「第二種奨学金」にわかれます。

以下は、有利子で借りる場合の標準的な金利を記載した表ですが、日本の奨学金制度は金利1%未満ですので、ほとんど金利負担なく教育を受けられる仕組みが整っています。

第二種奨学金平成30年度貸与利率一覧

2019年1月貸与の場合
平成19年4月
以降の採用者
基本月額 (利率固定方式)年率0.22%
〃  (利率見直し方式)年率0.01%
増額部分 (利率固定方式)年率0.42%
〃   (利率見直し方式)年率0.21%

つぎに、下記の表は無利子の「第一種奨学金の条件」です。
無利子で借りるためには、下記のように成績が優秀であるか、または生活保護を受けているなど所得面での条件がかなり厳しくなってきます。

第一種奨学金の貸与条件

学力基準(1)高等学校又は専修学校高等課程の1年から申込時までの成績の平均値が3.5以上
(2)高等学校卒業程度認定試験もしくは大学入学資格検定に合格した人、又は科目合格者で機構の定める基準に該当する人
(3)家計支持者(父母等、2人いる場合は2人とも)の住民税(所得割)が非課税であって、以下のいずれかに該当するとして学校長の推薦を得られる人
・特定の分野において特に優れた資質能力を有し、進学先の学校において特に優れた学習成績を修める見込みがあること
・進学先の学校における学修に意欲があり、進学先の学校において特に優れた学習成績を修める見込みがあること
家計基準家計の基準額は、世帯人員、就学者の有無等によって異なる。
家計支持者(父母、父母がいない場合は代わって家計を支えている人)の収入金額が選考の対象となり、収入・所得の目安はおよそ次の金額以内。
<収入・所得の上限額の目安>
世帯人数3人の場合→(給与所得者:657万円)(給与所得以外:286万円)
4人の場合→(給与所得者:747万円)(給与所得以外:349万円)
5人の場合→(給与所得者:922万円)(給与所得以外:514万円)

メリット「返済が難しい場合の特例措置がある」

奨学金の二つ目のメリットは、将来返済が出来なくなった場合の猶予措置があるという点です。

猶予措置は以下のパターンに分かれます。

減額した金額なら返済出来る場合

災害や傷病、そして失業などの経済的事情がある場合のみ、猶予を願い出る事ができます。

なお、猶予が認められると、一定期間「当初割賦金を2分の1または3分の1に減額」して、返済期間を延長してもらう事ができます。

※返済予定総額は減額されません。またすでに延滞している場合は願い出る事が出来ません。

返済が困難で、一定期間返済を待って欲しい場合

上記と同じく、災害や傷病、失業などの経済事情がある場合に願い出る事が出来ます。

これが認められると、一定期間「返済を先送りにする」事により、その後の返済がしやすくなります。
(※返済すべき元金や利息が免除されるものではありません。)

本人が死亡した場合や、障害により返済できない、または教育や研究の職に就いた場合

本人が死亡し返還ができなくなったときや、精神もしくは身体の障害により働けなくなり返済が出来なくなった場合には、返済未済額の全部又は一部の返還が免除される制度です。

また、平成15年度(2004年3月31日)以前に大学院の第一種奨学生に採用となった人には、以下の特例があります。

「奨学金の貸与を受けた方が所定の要件を満たし、教育又は研究の職に就いたときは、願い出により返還未済額の全部又は一部の返還が免除される」

デメリット「返済が長引く」

上記のメリットがある一方で、奨学金には「返済がとても長引いてしまう」というデメリットもあります。

たとえば、250万円を第二種奨学金で借りた場合の返済シュミレーションが以下の表となります。

以下の表を見てみると、たしかに金利は非常に低いのですが、2023年の4月から返済を始めた場合、返済が終わるのは15年後の2038年になります。

ただ、奨学金は返済中に生活の余裕が出てきた場合、スカラネットパーソナルから繰り上げ返済の手続きをすることが可能です。

奨学金をうまく活用するには、余裕のある時に任意で返済していくことがポイントになります。

返還例:第二種奨学金(入学時特別増額貸与奨学金あり)

貸与総額貸与利率返還期間(年)
2,500,000円0.26%(加重平均)2023年4月~2038年3月(15年)
内訳(基本月額2,000,000円)
(入学時増額分500,000円)
0.22%(基本月額)
0.42%(入学時増額分)
返済方法返済額返済回数返済総額
月賦返済通常(14,179円/月)180回2,552,444円
月賦半年賦 併用返還通常(7,089円/月)180回2,552,559円

参考URL:奨学金返済シミュレーション

なお、奨学金利用者の調査結果によると、以下の通り約2割が「延滞した事がある」というデータが出ており、中々給与が伸び悩んでいる昨今では、奨学金の滞納は社会問題になりつつあります。
参考URL:平成28年度奨学金の返還者に関する属性調査結果

デメリット「手続きが面倒」

奨学金の二つ目のデメリットは、奨学金利用時は「手続きが面倒」という点です。

以下に、申し込みの手続きの流れを記載しておきますので参考にしていただければと思います。

STEP1:申し込み手続き

在籍している学校を通じて、日本学生支援機構へ奨学金の予約採用申込みを行う。

採用候補者に決定した場合は、学校から配付された書類をよく読み、進学後の手続きの準備を行っておく。

STEP2:進学後の手続き

進学した学校へ、提出書類を提出する。(進学先から進学届のWEBサイトへ入るパスワードを受領して手続きする)

そして、WEBサイトより「進学届」を提出。その後返還誓約書等が学校を通して配付されるので、期限までに提出する。(提出期限までに、「返還誓約書」を提出しない場合は、採用が取り消される)

STEP3:貸与期間中の取り扱いについて

貸与期間中は、毎年1回学校を通じて「貸与額通知書」が発行される。

記載されている貸与月額や、貸与終了後の返還額等の記載事項を確認し、家庭の経済状況や卒業後の生活設計を十分考慮し貸与月額を見直す。

そのうえで、「奨学金継続願」をインターネットを通じて提出する。

また、学校は学業成績等により奨学生としてふさわしいかどうかの認定を行う為、成績不振や学校に行っていないなどの事情がある場合、奨学金は廃止される。

STEP4:奨学金の返済

奨学金の返済は金融機関の口座からの自動引き落しで行う。

その為、定められた期限までに「口座振替加入申込書(預・貯金者控)」のコピーを学校へ提出する必要がある。

なお、貸与終了後に引き続き在学する場合や、奨学金の返還中に災害や傷病などの止むを得ない事情で返還困難になった場合は、返還の期限が猶予されることがある。(ただし証明書の提出が必要)

教育ローンと奨学金を併用したほうがいい理由とは?

奨学金,どちらを利用

ここまでで教育費を捻出するためには、教育ローンと奨学金の二つの手段があり、各々にメリットとデメリットがあることはご理解いただけたかと思います。

ただ、教育費を用意する場合、教育ローンと奨学金のどちらかの方法に偏る必要は全くありません。

たとえば、年間の大学進学にかかる費用が100万円として4年間で400万円必要な場合、そのうちの200万円を教育ローンでまかない、残りの200万円を奨学金で用意するという方法も可能です。

特に親が高齢になっている場合、親が働けなくなった後で子供に経済的な支援をお願いするケースがあると思います。

このような場合、子供が奨学金の返済をしながら親の経済的な支援をしないといけない…など、子供に二重の負担を強いることにもなりかねません。

したがって、親が働ける間はできるだけ親が教育費用を工面し、老後の事を考えて子供の負担を軽くしておく…という考え方もあります。

教育ローンと奨学金について、まとめ

今回は教育資金を用意する方法として、教育ローンを利用する方がいいのか?それとも奨学金を利用する方がいいのか?、様々な視点から考えてみました。

各々メリットやデメリットがあるわけですが、結論としてはある程度の経済力がある場合は、親が教育ローンなどを利用して教育費を工面する方が賢明、という事になるのではないでしょうか。

ただ、いずれの場合も返済は長期にわたりますので、各金融機関の返済シミュレーションなどをうまく活用しながら慎重に検討されることをおすすめします。