スルガ銀行が融資をおこなっていたシェアハウス運営会社スマートデイズが倒産したことから、スルガ銀行の融資に関する問題が明らかになりました。
審査をろくにせず融資を実行する、書類を改ざんして融資を通すなど銀行としての役割を大きく逸脱していることから、金融庁からの調査も入りました。
しかしこの問題の裏には、スルガ銀行で日常的におこなわれていたパワハラに原因があることも明らかに。
ノルマをクリアできなかった行員に対して恫喝がおこなわれるなど、徐々にその真相が明らかになってきました。
こちらの記事では、スルガ銀行のパワハラ問題について詳しく解説。
今後スルガ銀行がどのようになっていくか、予想しながら見ていってください。
スルガ銀行のパワハラ問題が明らかになったシェアハウス運営会社の倒産
まずはスルガ銀行のパワハラ問題が明らかになる原因となった、シェアハウス運営会社の倒産について解説していきます。
シェアハウス運営会社の倒産でスルガ銀行の融資が問題に
2018年4月シェアハウス運営会社であるスマートデイズが、民事再生法と適用を申請した事が発表されます。
かつてタレントのベッキーをCMで起用するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いだったスマートデイズですが、シェアハウスの入居者低迷が原因で倒産することになります。
ここまでであればよくある話ではあるのですが、この倒産にはスルガ銀行が大きく関係していたことが明らかになります。
スマートデイズは新たにシェアハウスを作るときにかかるお金をオーナーから出資してもらっており、多くのオーナーはスルガ銀行から出資を受けていました。
出資を受けたオーナーはスマートデイズの倒産によって借金の返済ができなくなり、次々と自己破産。
融資をしていたスルガ銀行でも回収不能になった債権が、たくさん残るという結果になりました。
通帳改ざんなどをおこなった裏にはパワハラ問題が潜んでいた
事業を軌道に乗せることができず倒産してしまったスマートデイズにも責任はありますが、融資をしていたスルガ銀行にも問題が次々と明らかになります。
通常不動産融資など金額の大きな融資は審査が厳しいのですが、スルガ銀行では通帳を改ざんするなどして、審査要件を満たしていない人も審査に通過させていたことが判明。
公的な機関である銀行でこのようなことがおこなわれていたことから、驚いた人も多かったのではないでしょうか。
しかしこのような事態が起こった裏側には、スルガ銀行のパワハラ問題があることもわかってきました。
ノルマをクリアしないと恫喝されて、死ねと脅されることも日常茶飯事。
いわば強迫観念に迫られた行員は強引な融資をおこなってしまった、ということが実際の問題であるようです。
またそういったパワハラ問題は、一部ではなくスルガ銀行全体の問題としておこなわれていたようですね。
パワハラ問題は創業家の役員がおこなっていた問題であることも明らかに
さらに調査を進めていくと、パワハラ問題は創業家の役員がおこなっていた問題であることも明らかになりました。
恫喝する役員がいたことは第三者委員会でも報告されており、新たに任命された経営陣は旧取締役会や執行役員を提訴しています。
旧取締役会や執行役員が今回の問題を引き起こしたとして、総額35億円もの損害賠償を請求しています。
またスルガ銀行は創業家の関連会社に対して、使途不明金を含む数百億円もの融資をおこなっていたことも、調査の改定で判明。
こうした不正が日常的におこなわれていたことがわかります。
行員に対しては厳しく恫喝してノルマを達成させ、得た利益で私腹を肥やす。
典型的な悪者といえる行為ですが、こうした行為が長きにわたっておこなわれてきたことは間違いないでしょう。
第三者委員会で報告されたスルガ銀行パワハラの実態
それでは実際にスルガ銀行では、どのようなパワハラがおこなわれていたのでしょうか。
2018年9月7日第三者委員会の作成した報告書をもとに、スルガ銀行の実態を紹介していきます。
引用:2018年9月7日第三者委員会の作成した報告書
ノルマをクリアしないと会議などで恫喝される環境
第三者委員会の報告書に記載された特徴的な質問の1つが
「当社のノルマ(融資実行残高目標)を厳しいと感じたことはありますか? (上段:全行員下段:資産形成ローンの営業に携わったことのある行員)」
これに対して
「(全行員)はい1,423(39.6%) いいえ2,143(59.6%) 未回答29(0.8%) 合計3,595 (資産形成ローンの営業に携わったことのある行員) はい299(87.2%) いいえ44(12.8%) 合計343(100%)」
といった回答がありました。
全行員の約4割、資産形成ローンの営業に携わったことがある行員に関しては9割近い行員がはいという回答。
個人向け融資の中では金額の大きな資産形成ローンは、銀行の成績にも大きくかかわってくるため、より厳しくノルマが設定されていたのでしょう。
またはいと回答した人に対して、それはなぜかという質問に対しては
- 新規以外の条件変更稟議や法人稟議を作成していると恫喝される。できないと業務終了後母店へ通い、できるまで夜遅くまで電話セールスさせられる。
- もともとの目標自体が非現実的な数字になっているにもかかわらず週刻みのラップ目標に達成していないと、毎日のように追いかけられ会議では罵倒されるから。(支店目標を達成するために好意にしていただいてるお客様にお願いで借り入れしてもらい、翌月にはすぐ繰り上げ返済するようなチョイ貸しが月末や期末には横行し達成しているような目標)
- 毎月、月末近くになってノルマが出来ていないと応接室に呼び出されて(バカヤロー)と、机を蹴ったり、テーブルを叩いたり、1 時間、2 時間と永遠に続く。給料返せなどと、怒鳴られる。こうゆう、本部長や支店長、センター長は1人2人ではない。知っている限りでは全体の半分ぐらいそうだ。数字で怒鳴ったりしない支店長は、珍しく社員の中で噂が流れるほどだ。ノルマが出来ないと夜の10時過ぎても帰れない。残業代など支払われるはずがない。
などにわかには信じられない回答が見られました。
ノルマを達成できない社員に対しては、恫喝してもよいという文化がスルガ銀行全体に流れているようで、その流れは役員から作られていたようです。
ノルマをクリアしていないものに対して浴びせられた言葉の数々
さらに上司に厳しく叱責された例を挙げて、その状況を説明してくださいという問いに対しては
- 「なぜできないんだ、案件を取れるまで帰ってくるな」といわれる。
- 首を掴まれ壁に押し当てられ、 顔の横の壁を殴った。
- 数字ができないなら、ビルから飛び降りろといわれた。
- 担当しているチームの目標数字に対し進捗が不調であったとき、チーム全体を前に立たせ、できない理由を言わされた。
- 時間は2時間以上にのぼり支店の社員の前で給与額を言われそれに見合っていない旨の指摘を受け、週末に自身の進退(退職)を考え報告を求められた。
- 毎日 2~3 時間立たされて詰められる、怒鳴り散らされる、椅子を蹴られる、天然パーマを怒られる、1ヶ月間無視され続ける等々
- 毎日、毎日、怒鳴り続けられ昼食も 2 週間ぐらい全然、行かせてもらえず夜も11時過ぎまで仕事をさせられ体調が悪くなり、夜、眠れなくなって、うつ病になり銀行を1年8ヶ月休職した。
など人格を否定されるような暴言や暴力が横行していたようです。
こうした行為はもちろんパワハラに該当します。
暴行罪や脅迫罪に該当する行為がスルガ銀行内では横行しており、それによって精神的にまいってしまった人も多いのではないでしょうか。
パワハラを受けたくないから不正融資に手を染める行員
こうした厳しい環境に置かれた行員は、パワハラを受けたくないという理由で不正融資に手を染めます。
「営業上の成績(融資実行残高目標)の達成のために、会社の社内規程や業務手続等の社内ルールに違反した融資を実行したことがありますか?」
という質問に対して
- 登記簿謄本の改ざん、物件のレントロールの改ざんなど(資産形成ローン)
- 数字を落とせないとの認識から、当時の上司の指示で承認条件履行の書類を作った。
- 自己資金エビデンスが改竄されているであろうことを認識しているが融資実行。
- レントロールの内容が実際と変更されているであろうことを認識しているが融資実行。
(資産形成ローン)- 入社した当時、先輩社員が通帳の切り貼りをしていたという噂を聞きました。
他人の印鑑を多数持っていた先輩もいました。
といった回答が集まっており、社内で不正がおこなわれていたにも関わらず、それが黙認されていた状態であることがわかります。
厳しいノルマが課せられる→上司はノルマをクリアさせるために部下を恫喝する→恫喝されたくない部下は不正をしてでもノルマをクリアしようとする。
こうした負の連鎖が、スルガ銀行内では当然のようにおこなわれていたのでしょう。
また一時的にノルマをクリアしても、新しい月や期がはじまるとまた新たなノルマが課せられます。
不正をしてしまった行員にも責任はありますが、そうでもしないと精神的にもたなかったと考えると経営陣の責任は重いですね。
事態を把握できていなかった金融庁
スルガ銀行内でパワハラが横行していたことが明らかになりましたが、こうした行為は日常的におこなわれていたと思われます。
このような状態で精神バランスを崩してしまった人も、1人や2人ではないでしょう。
パワハラを訴えた人もいると思いますが、金融庁が動いたのはシェアハウス運営会社の倒産後。
業績を伸ばしていたスルガ銀行に対しては、見て見ぬふりをしていたのではないでしょうか。
全国106行のうち54行が赤字になるなど厳しい現実が続く地方銀行のなかで、業績を伸ばしたスルガ銀行は地方銀行の優等生とも呼ばれていました。
こうした現実から金融庁も事態を把握できていなかったのか、把握していても動かなかったというのが現実でしょう。
今回の問題は社会的にもかなり話題になったので、今後業界としてどのように動くのかは注目ですね。
スルガ銀行の今後はどのようになっていくか予想
それではこうした現実を踏まえたうえで、スルガ銀行は今後どのようになっていくか筆者なりに予想していきます。
新社長のもと再建を目指すスルガ銀行
一連の流れを受けて、創業家で会長であった岡野氏は辞任し、取締役会のメンバーも一部辞任しました。
有国取締役が新社長として任命され、再建を目指す人事が発表され新たなスタートを切りました。
企業を再建させる中でスルガ銀行に対する調査も、引き続きおこなわれています。
2019年2月にはスルガ銀行がデート商法まがいの詐欺行為に対して、個人向けローンを融資していたことも判明。
こうした行為もノルマを達成し、パワハラを受けないための行為で氷山の一角ではないでしょうか。
銀行の在り方が問われる
今後もスルガ銀行の融資に関してはさまざまな調査が入ると思われますが、スルガ銀行はこれを受け止めるしかないでしょう。
そして銀行とは本来どのような存在であるのか、銀行としての在り方が問われていくでしょう。
銀行は企業でありながら、政治や経済と関係が深い特殊な業態でもあります。
そのような存在であるからこそ、融資の審査は正確におこなわなければなりませんし、社会的な責任も重いです。
これだけIT関係が発達してきた現代でも、振り込み情報は平日15時までしか反映されないなど、銀行という業界自体は世の中からかなり遅れている存在でもあります。
本来ITをより使わなければならない銀行が世の中から遅れていることも問題視されていますので、そういった問題もこれから銀行は直面してくるでしょう。
今後スルガ銀行をはじめ銀行在り方が問われてくると思いますので、スルガ銀行がどのような対応をするか注目ですね。
スルガ銀行のパワハラ問題は解決されるのか
ここまでスルガ銀行のパワハラ問題について解説してきました。
スルガ銀行を改革するには、まずパワハラ問題を解決しなければなりません。
しかしこれまでパワハラを前提に指導をしてきた人たちが、いきなりすべて変わるというのも現実的には難しいでしょう。
少しずつ状態をよくしながら、スルガ銀行がよい銀行になっていくことを祈っています。