不動産投資や株式投資などとは異なり、1万円程度の資金でも手軽に始められる投資ということで相変わらず人気があるのがFXです。
FXは利益が出るしくみがとてもシンプルなので、学生や主婦でも大きな利益が出せるという話を聞く一方、FXで大負けをしてかなりの額の借金を背負ってしまったという話を目にすることもあります。
基本的にはFXの取引では大きな借金を背負ってしまうことはありえないといわれているのに、破産してしまうほどの借金を抱えてしまうようなことが本当にあるのでしょうか?
もしFX取引で大きな借金を抱えてしまうようなことがあるとしたら、それはどのような場合なのでしょうか?
今回は、FXで破産しまうケースと、FX取引で借金を抱えないための対策について迫ってみたいと思います。
FXで利益が出るしくみとは
FXとはForeign Exchange、つまり外国為替を意味していて、正式名称を外国為替証拠金取引といいます。
FXと聞いてあなたは何をイメージしますか?
「FXはリスクが高くて怖いもの」
「FXに失敗したら借金を背負ってしまいそう」
「大きく資産を増やせる投資方法」
色々な意見が聞こえてきそうですが、FXに対する取り組み方次第でどれも正解になるといえるでしょう。
この章ではまず、FXの基本的な取引のしくみについて解説したいと思います。
外国の通貨を売買して利益を得る
FXとは、外国の通貨のレート差を利用して利益を得る取引を指します。
例えば、海外旅行に行く時には通貨を両替しますが、それをイメージするとわかりやすいでしょう。
アメリカに旅行に出かける時に、日本で1ドル=100円のレートで10万円分両替すれば1,000ドルになります。
旅行中は特に現金を使うことがなかったため、その1,000ドルをそのまま日本に持ち帰り日本円に再度両替するとします。
もしこの時、レートが1ドル=105円になっていたら、1,000ドルは10万5,000円に両替できますよね。
つまりレートが変動したのでドルの価値が高くなり、特に何もしていないのに両替しただけで5,000円得してしまったのです。
FX取引は基本的にこの両替と同じしくみだと考えてください。
円高ドル安の時にドルを買い、円安ドル高になったらドルを売って円を買う、そうすれば利益を得られるというしくみです。
株や外貨預金とは異なるFXの大きな特徴
ここまで説明したFXのしくみは、株や外貨預金で利益を上げる方法とよく似ているので比較的理解しやすいかと思います。
FXの「買い」はイメージするのが容易
要するに、取引のタイミングとしては安い時に手に入れて高くなったら売るのが基本ですから、それに当てはめて考えると、FXでレートが高くなったままの状態の時にはレートが下がるまでドルを買うのを見送らなければならない…という考え方です。
買ったドルが値上がりしなければ利益は出ないわけですから、それは間違いではありませんし、株や外貨預金の場合はそうしなければ損失が出てしまいますよね。
ところがFXの場合は、「買い」から始めるのではなくて「売り」からスタートすることもできるので、レートが高いままでも取引を始めることができます。
これが、FXが他の投資と大きく異なる特徴であり、大きなメリットだといえるでしょう。
FXで「売り」から入るっていったい何?
普通の感覚からいくと、何も買っていないのに「売る」ことができるって一体どういうこと?と思ってしまいますが、カンタンに説明すると「FX業者からお金を借りて売る」ということなのです。
自分のFX口座には円しか入っていなくても、それを担保にしてFX業者からドルなどの外貨を借りておいて、それを売るという取引がFXではできるのです。
そこで狙い通りにレートが下がれば、ドルなどの外貨を売った時に手に入れた円で再びドルを買い戻すことで利益を得られます。
例えば、1ドル=100円の時点でこの後レートが下がるだろうと見込んで「売り」から入るためにFX業者から1ドルを借りたとしましょう。
借りた1ドルを売れば100円が手に入ります。
その後、見込んだ通りにレートが下がって1ドル=90円になったら、その時点で再びドルを買い戻すのです。
90円で1ドルを手に入れられるのですから、買い戻した1ドルと10円が手元に残り、借りた1ドルを返済すれば10円が利益になります。
スワップ金利でも利益を得られる
FXはレート差による利益だけでなく、通貨の金利差から得られるスワップポイントと呼ばれる金利のようなものによっても利益をあげることができます。
例えば、ドルを購入する場合に日本円の金利が0.1%、アメリカドルの金利が0.25%だったとすれば、日本円を売って米ドルを買った場合にその金利差である0.15%をスワップポイントの利益としてもらえます。
スワップポイントは決して大きい金額ではありませんが、毎日受け取ることができるので長期的な取引をする場合には重視したいポイントです。
ただ、現在は日本円の金利が非常に低くて他の多くの通貨の金利の方が高いので、円を売って外貨を買えばスワップポイントを受け取ることができますが、逆に日本円よりも低金利の通貨を買った場合にはスワップポイントを支払わなければなりません。
高金利通貨を売って低金利通貨を購入したまま長期間保有しているような場合だとスワップポイントの損失額が大きくなる場合もありますので注意が必要です。
基本的にFXで借金を抱えるリスクは低い
FXのしくみについて何となく理解できたところで、いよいよ本題に入りましょう。
FXでかなり収入を得ているという人の体験談もあれば、大負けして破産するほどの借金を抱えてしまったという話を見かけることもあります。
やはりFXには借金を抱えてしまうような大きなリスクがあるのでしょうか?
FXでは最初に「証拠金」を預ける必要がある
FXの取引をする場合には「証拠金」をFX業者に預けなければなりません。
FX口座を開設して取引をするために、その口座にお金を預けるのです。
口座に入金した証拠金はいわゆる担保として取り扱われ、FXの取引をしているうちに損失が発生した場合にはこの証拠金が減っていきます。
じゃあ、FXの取引で大きな損失が出てしまえば証拠金がマイナスになることだってあるだろうと考えますよね?
ところが、FXの取引では基本的に元本割れを起こすことはまずないといわれています。
それは、ほとんどのFX業者には「強制ロスカット」というシステムがあるからなのです。
一定以上の損失が出ると「強制ロスカット」が行われる
「強制ロスカット」とは、FXの取引を行う中で予想が外れて通貨が値下がりして含み損が一定以上になった場合に、発生した損失が証拠金の金額を超えることがないように自動的に決裁を行うシステムです。
損失が一定以上膨らんだ場合には強制的に自動決済してしまうわけですから、証拠金がマイナスになって借金を抱えてしまうようなケースは基本的に発生しようがないのです。
でも、そうだとしたらなぜFXで借金を抱えて破産してしまったなどという話を目にするのでしょうか?
強制ロスカットシステムがあれば、元本割れする危険はないはずですよね…?
それでもFXで借金を抱えてしまうのはどうして?
強制ロスカットシステムという強い味方があるからこそ安心してFX取引を行えると思っていたのに、それでもFXで借金を抱えてしまうことがあるって一体どういうことなのでしょうか?
FXではレバレッジをかけることができる!
実はFXでは、資金である証拠金の最大25倍までの金額の取引ができるシステムになっています。
実際にはお金を持っていないのに、自分が持っている以上の資金を借りて取引を行うことができてしまうのですね。
レバレッジを利用するとどのように取引が行われるのかを考えてみましょう。
FXでのレバレッジの効果とは?
例えば、10万円の資金があったとしましょう。
この場合、1ドル=100円のレートなら1,000ドルに両替ができますよね。
そしてもしドルを購入した後にドルが101円に値上がりすれば、1,000円の利益を得ることができます。
ここでレバレッジ25倍をかけた取引を行うとどうなるでしょうか?
レバレッジを25倍にすると手持ち資金10万円で250万円分の取引が可能になります。
その資金で1ドル=100円のレートでドルを購入すれば25,000ドルに両替ができます。
その後ドルが101円に値上がりすれば利益は25,000円になりますよね。
レバレッジを高くして取引をすれば小さな手持ち資金でも大きな利益を得ることができるのです。
ただし、それは読みが当たって取引が成功した場合の話です。
取引が思うようにいかず失敗してしまった時に高いレバレッジをかけていれば、大きな損失を出してしまうとことだってあるわけです。
レバレッジが借金を招くことも…
例えば、先ほどと同じように10万円の手持ち資金でレバレッジ25倍分のドルを購入したとします。
ドルが高くなることを見込んで高いレバレッジで取引を始めたものの、読みが外れてドルが5円値下がりしたとするとどうなるでしょうか?
1ドル=95円になってしまったのですから、250万円分のドルは
2,500ドル×95円=2,375,000円
に減ってしまいました。
ただし、元々の手持ち資金は10万円しかなかったわけですから、差引2万5,000円は丸々借金として残ってしまうということなのです。
つまり、高いレバレッジで取引をしている時に大きくレートが動いてしまうと、あっという間に強制ロスカットにかかってしまい、さらに借金を抱えてしまう可能性もあるということなのです。
相場が急変動してロスカットが追いつかない
上でも説明したように、FX取引では強制ロスカットシステムが作動しますので、基本的には取引に失敗したとしても借金を抱えるようなケースはほとんど見られません。
ところが、あまりにも急激にレートに変動が起こると、システムが対応しきれずロスカット機能がうまく発動されないことがあるのです。
そうしたケースはめったにあるものではありませんが、実際に2015年にはユーロ/フランが短時間のうちに40%も暴落したために、強制ロスカットを実行したにも関わらず証拠金を上回る大損失を出してしまった人が続出しました。
スイスフランショックの影響は非常に大きく、海外では倒産した証券会社もありましたし、日本国内でも破産してしまった投資家がいたといいます。
非常にまれなケースですが、FXの取引で事故といってもいいような状況に巻き込まれれてしまえば、それなりに注意して取引を行っていても借金を抱えてしまうこともあるのですね。
ポジションを持ち越した週末の間に相場に大きな変動があった
FX取引においてはポジションという言葉が頻繁に使われます。
ポジションというのは、ある通貨を購入してそれを保有している状態をさします。
購入した通貨を売ったり、また売った通貨を買い戻したりして決済をすればポジションは消滅します。
FX取引を行う場合には、通貨を購入してそれを保有したまま週をまたぐ、つまりポジションを持ったまま週末を迎えることは控えましょう。
FX取引は、平日なら24時間取引が可能ですが、土曜日や日曜日は全世界の市場が休みに入ります
市場が休みに入っている間に相場に大きくレートが下がってしまうと、どんなに含み損が拡大してしまっても売ることができません。
週明けに市場が開いた時にいきなりロスカットが成立して、予想外の損失を被ってしまうなどということがないとも限らないのです。
借金をしてまで取引を行ってしまった
そしてFX取引で借金をしてしまう理由で最も多いのが自分から進んで借金をして取引につぎ込むというパターンです。
急激な相場の変動でロスカットが間に合わない、また週末にレートが大きく動いてしまったために損失を被ったというようなケースだと予期しない出来事に巻き込まれたということでまだ同情の余地がありますが…。
FX取引では、自分が思った通りにレートが動かなくて損失が出始めると自動的に強制ロスカットが発動されます。
そうなると取引が出来なくなってしまうのですが、それでも「次は必ず勝ってみせる」と追加の入金を繰り返してしまう人もいるのです。
こうなるともうギャンブルと同じです。
冷静さを失っていますから、さらに損失が出て強制ロスカットになってもどこかから借金をして追加で入金をしてしまいます。
こうしてどんどん借金が膨らんでいく、という悪循環に陥ってしまうと破産への道をまっしぐらに突き進んでいくことになるのです。
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FXで借金をしないための方法とは?
他の投資よりも少ない資金で始められ、基本的には入金した以上の損失を被るリスクが限りなく低いはずのFX。
そんなFX投資で借金をしてしまうのは、投資のキホンをすっかり忘れて感情に任せて取引をしてしまうからです。
FXで借金をしないための方法といっても本当に特別なことはありません。
ごくごく基本的なことばかりですが、ご紹介しますのでぜひ参考にしてください。
低レバレッジで取引をする
レバレッジを高くかければ確かにリターンは大きくなります。
しかし当然のことながらリターンが大きければ大きいほどリスクも大きくなるということを忘れてはいけません。
少ない資金で大きな金額を運用できるのはFXの大きな魅力の一つですが、高いレバレッジで取引をして借金を抱えてしまっては本末転倒です。
FXで借金をしないためには、できればレバレッジは1倍で取引するのが理想的です。
どんなに自信があっても初めのうちはレバレッジは2倍~3倍までに止めておくべきでしょう。
低い倍率で運用すればFX投資で借金を抱え込むようなことにはならないはずです。
週末にポジションを持ち越さない
先に説明した通り、FX取引ではポジションを持ったまま週末を迎えることが大きなリスクにつながることもあります。
短期の取引をメインにしている場合は、週末に入る前には必ずポジションを決済するようにしましょう。
そうすることで、予期しないレートの変動に巻き込まれるリスクを抑えることができます。
また、レートが大きく変動しそうな大きなイベント、例えば、大きな国政選挙や首脳会議などが行われることが分かっている場合には、その前後はポジションを持たないようにすべきです。
損切りルールを徹底して守る
FX取引による損失を最小限にとどめるためには、なるべく損失額が少ないうちに見切りをつけて撤退することが重要です。
FX取引では感情を優先させるのはNG
損失が出ている取引をどこかで打ち切って撤退することを「損切り」といいます。
投資をする場合には必ず自分で損切りのルールを作っておき、損失が一定のラインを超えた場合には徹底的にルールに従って損失額を確定させてしまいましょう。
負けた分を取り返したいという気持ちは誰にだってありますが、その気持ちに振り回されて取引を続けてしまえばもうそれは投資ではなくてただのギャンブルです。
ルールに従えばFXで借金を抱えるリスクは激減する
FXで借金を抱えてしまわないためには、自分で作ったルールに従ってコツコツと取引をしていくことが大切なのですね。
FXの初心者が取引で失敗してした人のほとんどが、
- 損切りルールを設定しなかった
- 損切りルールを設定したにも関わらず感情に流されて損切りできなかった
のどちらかに当てはまるといいます。
FXに限ったことではありませんが、投資においては自分の感情よりもルールを優先して機械的に行動しなければなりません。
そうした冷静な取引をする自信がないのなら、初めからFXでの投資はしない方がよいでしょう。
マイナー通貨の取り扱いには注意する
FXでは米ドルやユーロ、円謎の通貨が多く取引されており、取引量や取引参加者の多いこれらの通貨は「メジャー通貨」と呼ばれています。
一方、メジャー通貨とは反対に、取引量や取引参加者が少ない通貨のことを「マイナー通貨」と呼んでいます。
メジャー通貨とマイナー通貨の特徴
メジャー通貨は金利がそれほど高くはありませんが、流動性が高く急激な相場変動も起こりにくいので、低リスクで取引できるというメリットがあります。
それとは逆に、マイナー通貨には金利が高いというメリットはあるものの、流動性や安定性が低いというデメリットがあるのですね。
流動性が低いということは、売りたくても売れない、買いたくても買えないという状況になりやすいということを意味します。
従って、継続して安定した取引を行うのが難しいです。
また、供給量も少ないので、予測がつかないような価格変動が起こることも珍しくありません。
さらにいうなら、金利が高いのは確かに大きなメリットだといえますが、裏を返せば高い金利をつけなければ購入してもらえない通貨だということを表しています。
ということも理解しておくべきでしょう
マイナー通貨の性質を理解しておく
FX取引の失敗で大きな借金を作ってしまったという人の体験談などを見ると、マイナー通貨の性質をよく理解しないまま取引していたというケースが目立ちます。
FXで借金を作ってしまわないためにも、FXの初心者は値動きの予測がしづらいマイナー通貨よりも安定性の高いメジャー通貨の取引で経験を積むことをおすすめします。
特に、FX初心者のうちは最もメジャーなアメリカドル/円だけでも構いません。
色々な通貨ペアを取引するよりメジャーな通貨ペアでFXの基本的な値動きの特徴などを理解することに注力することです。
FX取引は余剰資金の範囲内で
投資に使うお金は、失っても生活に影響することのない余剰資金を使うべきだといわれています。
これは何もFX取引だけに限ったことではありません。
なくなっても困らないお金で取引していれば、損失を被っても冷静でいられます。
なくなっては困るような生活費にまで取引につぎ込んでしまったら、負けを取り返さなければと必死になってしまって、どうしても冷静ではいられなくなってしまうはずです。
感情に流されてしまっては的確な投資判断を下すことはできないでしょう。
生活資金を投資につぎ込んでしまうと、勝つまでは絶対に手をひけなくなってしまいます。
FX取引で最も重要なのは、ある一定のラインまで損失を出してしまった場合にいかに感情的にならずにそのポジションを機械的に手放せるか、なのです。
FXは、引き際を逃さないためにも余剰資金の範囲内で取引を行うことを徹底しましょう。
そうすれば借金を作るようなことにはならないはずです。
おわりに
FXは、しくみをしっかりと理解してリスク管理を適切に行えば借金を抱えるようなことにはなりません。
要するに、決められたルールの範囲で節度を保つことができる人ほど大きな失敗をする可能性も小さくなるのですね。
よく、投資は車の運転に例えると分かりやすいといいます。
スピードの出しすぎは危険だということをよく理解して安全運転をできる人は、楽しくドライブをして無事目的地に到着することができますが、猛スピードで無茶な運転をしていれば目的地に到着する前に事故を起こしてしまう可能性がうんと高まりますよね。
FX投資もそれと同じです。
FX投資が大きな利益を生み出してくれるか、それとも逆に大きな借金を抱える原因になってしまうかは、FXを運用するあなた次第であるということを忘れないでください。