2018年5月静岡県に本拠を置くスルガ銀行が、不正を認識して融資をしていたことが判明。
株価も急落し、世間的にも大きなニュースになったことは、記憶に新しいのではないでしょうか。
その後も次々とスルガ銀行の問題が判明しますが、その中でももっとも大きな問題となったのがシェアハウス運営会社スマートデイズへの融資。
総額2,000億円以上の融資がおこなわれていましたが、それはスルガ銀行が個人に融資したものであることが判明。
スマートデイズが倒産したことで、融資したお金の回収が不可能になりました。
こちらの記事では、スルガ銀行の融資したシェアハウス運営会社の倒産について徹底解説!
なぜ倒産し、今後はどのようになっていくか解説していきます。
地方銀行であるスルガ銀行が不正融資をおこなっていたことが判明
まずはスルガ銀行が不正融資をおこなっていた一連の流れについて解説していきます。
事態が発覚したのはシェアハウス運営会社の倒産
2018年4月シェアハウス運営会社であるスマートデイズが、民事再生法と適用を申請した事が発表されます。
民事再生法が適用されるということは、スマートデイズは倒産するこということ。
かつてタレントのベッキーを起用してテレビCMも放映していた会社が倒産したので、びっくりした方もいるのではないでしょうか。
スマートデイズはかぼちゃの馬車という女性専用シェアハウスを中心にシェアを伸ばした会社で、首都圏で約900棟ものシェアハウスを展開していました。
敷金・礼金不要で入居できるシェアハウスだったので、新たなムーブメントとして注目されていました。
他にも不正融資がおこなわれていたことが確認される
しかしそんなスマートデイズのシェアハウスですが、2017年ごろから入居率が低迷します。
これによって困ったのがシェアハウスのオーナー。
スマートデイズが多くのシェアハウスを展開できた裏にはオーナーの存在があり、オーナーはスルガ銀行から融資を受けてスマートデイズに出資をしていました。
オーナーたちは入居状態にかかわらず家賃が保証されるサブリース契約を結んでいたので、借金を背負っても家賃収入で返済できるという考えで契約。
契約金額は数千万円から数億円にのぼっていたそうです。
これらの契約を結んだのはサラリーマンが多く、資産をもたない人がほとんど。
のちの調査で資産などをチェックせず、どんどん融資をしていたスルガ銀行の姿が明らかになりました。
その後スマートデイズが倒産し、多くのオーナーが支払い不能状態に。
これを問題とした金融庁は、スルガ銀行を調査し今回のシェアハウス問題以外にも、スルガ銀行が不正融資をおこなっていたことを明らかにします。
半年間の業務停止命令・前会長らへの損害賠償請求などがおこなわれる
その後金融庁は2018年10月から不動産投資など一部業務停止命令をくだします。
またシェアハウスの件に限らず、役員が不正融資に関与していた事例が多数あり、常態化していたことも明らかに。
創業家である岡野会長は辞任し、有国取締役が新社長として再建を目指す人事が発表されました。
その後スルガ銀行は前会長である岡野氏ら9名に対して、35億円の損害賠償を請求。
旧経営陣への責任追及を徹底しておこなう姿勢を見せています。
シェアハウス運営会社スマートデイズの倒産から、スルガ銀行の実態が明らかになりさまざまな問題が明るみに出ました。
今後スルガ銀行はどのようにして再建をしていくのでしょうか。
シェアハウス運営会社はなぜ倒産することになったのか解説
シェアハウス運営会社の倒産をきっかけに社会的問題となったスルガ銀行の事件。
そもそもなぜシェアハウス運営会社スマートデイズは、倒産することになったのでしょうか。
ここからはなぜスマートデイズが倒産することになったのか解説していきます。
個人投資家にスルガ銀行が融資をおこないオーナーになっていた
スマートデイズは全盛期首都圏を中心に、900棟ものシェアハウスを展開していました。
シェアハウスを作るということはもちろん多額の費用が必要ですが、これらのお金はスルガ銀行から融資を受けたオーナーが出資していました。
このときオーナーが持ち出す金額は少額の自己資金だけで、ほとんどがスルガ銀行からの融資で支払われていたので、実質スルガ銀行の融資でシェアハウスを作っていたことになります。
オーナーは人が入居するかしないに関わらず家賃が支払われるサブリース契約をしていたので、サブリースで支払われた金額の中からスルガ銀行に返済ができると思っていたようですね。
入居率が低迷しオーナーに家賃保証分が支払えない事態に
サブリース契約で借金が返済できると謡っていたスルガ銀行ですが、スマートデイズのシェアハウス入居率が低迷するという事態が起こります。
入居率が低迷するということは、家賃収入が得られないということ。
スマートデイズはオーナーとサブリース契約を結んでいますので、家賃収入が少なくなってもお金を支払わなければなりません。
こうした状態になってしまうとスマートデイズは赤字続きになってしまい、最終的には倒産してしまいます。
報酬が受け取れないオーナーは次々自己破産の道へ
スマートデイズが倒産してしまい、困ったのはシェアハウスのオーナー。
彼らはスルガ銀行から融資を受けているにも関わらずスマートデイズが倒産してしまい、家賃収入を受け取ることができなくなります。
シェアハウスを手放しても多額の借金が残り、次々自己破産の道を歩むことになりました。
金融庁のその後の調査でシェアハウスの価格を水増しして高額の契約をしていたことや、融資時に預金通帳を改ざんして契約していた実態も明らかになります。
融資をおこなった裏にはパワハラ問題も
このような流れで多くの自己破産者を生んでしまったスマートデイズ倒産の件ですが、その後の調査でスルガ銀行でのパワハラ問題が裏にあったことも判明してきます。
そもそもスルガ銀行がスマートデイズのビジネスモデルをしっかり調査し、今後うまくいかない可能性があると判断できれば、今回のような事件は起こりませんでした。
しかしスルガ銀行内では数字を出さないと会議で罵倒されるなど、数字に対するプレッシャーがすごかったことがわかってきます。
「なんとかしてノルマを達成しなければならない」
そうした考えから預金通帳を改ざんするなどして次々融資をおこなう。
その裏に隠されたリスクを考えることなく、融資をおこなってしまったのではないでしょうか。
もちろん現場でローンを勧めていた行員にも問題はありますが、それ以上にスルガ銀行全体の在り方が問題視されてきましたね。
地方銀行の優等生と言われたスルガ銀行は再建の道へ
こうした経緯からスルガ銀行は会社をあげて、再建の道を歩むことになります。
かつて5年連続で最高益を更新し、地銀の優等生と評価されていたスルガ銀行ですが、一連の事件で株価はピーク時の5分の1ほどにまで下がります。
地方銀行は全国106行のうち54行が赤字になるなど、厳しい現実に直面している銀行も多くあります。
そうした状況下もあってか、今回のスルガ銀行の件は金融庁もチェックできていませんでした。
今後は他の銀行はチェックもより厳しくなると思われるので、スルガ銀行をはじめとした地方銀行はより厳しい目にさらされていくでしょう。
今後のスルガ銀行に関する動向予想
こうした一連の流れから、スルガ銀行は現在も厳しい立場に立たされています。
しかし静岡県沼津市の指定金融機関でもあるスルガ銀行は、どんなに厳しい立場であろうとも再建が求められます。
ここからは今後のスルガ銀行に関する動向を筆者が予想していきます。
金融庁に業務改善計画を提出
一連の事件が一旦落ち着いた2018年11月30日、スルガ銀行は金融庁に対して業務改善計画を提出します。
業務改善計画書には、「創業家本位の企業風土を抜本的に改めることが改革の前提条件」と明記されており、銀行の風土自体を改めることを掲げています。
今回の事件の根本的な問題の一つであるパワハラ問題にもしっかりと向き合い、業務自体も改善していく姿勢がこちらからは感じられますね。
不正融資が次々明らかになる現状
スルガ銀行を再建していく過程の中で、これまでおこなわれた不正についても徹底的に究明していくことが発表されます。
その中でスルガ銀行は創業家の関連会社に対して、数百億円にのぼる使途不明金の融資をおこなうといったことも判明してきました。
またスルガ銀行行員がデート商法詐欺まがいの行為に関与し、個人向けローンを融資していた疑いも判明しています。
このようにスルガ銀行に関連した不正融資は次々と明るみになってきていますので、今後も注目されることは間違いないですね。
スルガ銀行の会社としての力が試されることに
このようにスルガ銀行は会社としてもかなり厳しい立場に立たされています。
しかし銀行という業務の性質上、簡単に倒産するということはできません。
スルガ銀行が倒産してしまったら融資を受けていた企業も影響を受け、大変な事態になってしまうことは容易に想像がつきます。
企業の体質をいきなり変えるということは、かなり大変で時間もかかることです。
しかしスルガ銀行自体も再建をしなければならないので、今後はスルガ銀行の会社としての力が試されることになるでしょう。
スルガ銀行は今後再建されるのか
ここまでスルガ銀行が融資するシェアハウス運営会社が倒産した件から、今後のスルガ銀行について解説してきました。
今回の件でスルガ銀行がこれまで抱えていた闇があきらかになり、今後大きな改革が必要になりました。
スルガ銀行は静岡県を支える銀行でもありますので、今後再建されるのか注目していきたいですね。