消費者金融には総量規制があるので年収の3分の1を超える金額を借りることはできないはずですが、消費者金融で総量規制以上の借り入れができるという話をどこかで見かけたことはありませんか?
今回は、総量規制と消費者金融の関係について徹底リサーチしていきます。
総量規制対象外の消費者金融はない!
改正貸金業法が完全施行されたのは2010年。
利用者が安心して消費者金融から借り入れができるように新しいルールがスタートしました。
それが「総量規制」です。
消費者金融からの借りすぎを防止するために制定された法律です。
消費者金融の「総量規制」とは?
総量規制とは、個人が消費者金融など貸金業者から融資を受ける場合、借り入れの総額が原則として年収の3分の1までに制限されるルールです。
多重債務問題を解決して安心して消費者金融を利用できるようにと、2010年に貸金業法が完全施行されると同時に総量規制も導入されています。
総量規制は貸金業法に規定されていますので、貸金業法が適用される消費者金融は全て総量規制の対象です。
総量規制では、
- 1社の消費者金融から50万円超の借入をする場合
- 複数の消費者金融からの借入総額が100万円超になる場合
には、消費者金融は、申込者に収入証明書を提出してもらうよう求めなければならないと規定しています。
これは、消費者金融の申込者が返済能力を超える借入をするのを防ぐためです。
また、消費者金融が申込者にお金を貸す場合は、国が指定する信用情報機関に照会をして申込者の返済能力を調査することも義務付けられています。
銀行カードローンは総量規制対象外でしたが…
同じカードローンでも、銀行カードローンは貸金業法が適用されませんので消費者金融とは違って総量規制対象外です。
ところが2017年以降、消費者金融と同様に総量規制を銀行カードローン業界にも導入しようという動きが見られます。
理由は、銀行カードローンの過剰融資問題です。
銀行カードローンの最大のメリットは借入金額が総量規制に制限されない点にありましたが、消費者金融とは対照的に銀行カードローンの貸付残高は年々増加する一方。
2016年にはついに自己破産者数が13年ぶりに増加に転じるという状況に陥ってしまいます。
実は、その原因が銀行カードローンの過剰融資にあるのではと以前から指摘されていたのですね。
厳しい批判を受けた銀行カードローン業界は、現在は消費者金融と同じように総量規制を自主的に導入しています。
総量規制対象外でありながら実質的には総量規制を取り入れている、それが今の銀行カードローンです。
消費者金融の総量規制対象外の借入にはどんなものがある?
総量規制は全ての貸金業者に適用されるルールですから、総量規制対象外となる消費者金融業者は存在しません。
しかし、消費者金融からの借入には特例として総量規制対象外となる取引があります。
総量規制対象外の借入~総量規制の「除外」
総量規制の除外とはそもそも総量規制対象外となっている取引を指します。
- 不動産購入または不動産に改良のための貸付(そのためのつなぎ融資を含む)
- 自動車購入時の自動車担保貸付
- 高額療養費の貸付
- 有価証券担保貸付
- 不動産担保貸付
- 売却予定不動産の売却代金により返済できる貸付
- 手形(融通手形を除く)の割引
- 金融商品取引業者が行う500万円越えの貸付
- 貸金業者を債権者とする金銭貸借契約の媒介
は総量規制対象外です。
不動産購入または不動産に改良のための貸付
一般的に、一戸建てやマンションなどの住宅ローン、そして家をリフォームしたり改築したりするためのローンは数百万円から数千万円の単位の金額になります。
ただ、これを総量規制の対象としてしまうと、住宅を購入できるのはごく限られた一部の人のみになってしまいます。
従って、不動産購入のための消費者金融からの借入は総量規制対象外とされています。
自動車購入時の自動車担保貸付、有価証券担保貸付、不動産担保貸付
担保となる物件がある借入は、総量規制の対象外の取引に該当します。
例えば、自動車を担保として消費者金融から自動車購入資金を借り入れる場合を考えてみましょう。
万一返済が出来なくなったとしても、担保である自動車をお金の代わりに消費者金融に引き渡せば消費者金融はそれを処分して貸付金を回収できますね。
担保付きの融資は、総量規制で制限する必要性に乏しいので総量規制対象外となっています。
株や国債、社債などの有価証券や不動産を担保として消費者金融から借り入れをする場合も、同様にして貸付金を回収できるため総量規制対象外となっています。
高額療養費の貸付
本人や家族が大きなケガや病気をした場合、高額な医療費を支払うために消費者金融から行なう借り入れは総量規制対象外です。
除外される高額な医療費とは、高額療養費制度を利用した場合の自己負担限度額を超過した部分を指します。
借主と家族の生命や健康を維持するための資金だからという面もありますし、高額療養費制度では自己負担限度額を超過した部分については後日払い戻しがありますので、ある意味それを担保としてとらえる面もあるのでしょう。
総量規制対象外の借入~総量規制の「例外」
総量規制の例外とは、本来なら総量規制によって制限される借入にあたるけれども、返済能力があれば総量規制で制限せずに消費者金融から借入することを認めよう、という取引を指します。
- 顧客に一方的有利となる借り換え
- 緊急の医療費の貸付
- 社会通念上緊急に必要と認められる費用を支払うための資金の貸付
- 配偶者と合わせた年収の1/3以下の貸付
- 個人事業者に対する貸付
- 預金取扱金融機関からの貸付を受け取るまでの「つなぎ資金」に係る貸付
が総量規制対象外の取引に該当します。
顧客に一方的有利となる借り換え
顧客に一方的に有利になる借り換えとはいわゆる「おまとめローン」や「借り換えローン」をいいます。
おまとめをする、また、借り換えをすることによってこれまでよりも返済条件が有利になることが総量規制対象外となる条件です。
複数の消費者金融で借入をしている人にとっては、総量規制対象外の借入の中でも最も興味をひかれるのが「おまとめローン」だと思いますので、別章で詳しく解説します。
緊急の医療費の貸付
消費者金融の利用者本人やその家族がケガや病気のため緊急で医療費が必要になった場合は、総量規制の例外として借り入れができる場合もあります。
急なケガや病気で治療を受ける必要があるのに、総量規制の限度額を超えているから治療費を消費者金融から借入できないというのは人道的ではありませんので、至極当然のことだといえるでしょう。
配偶者と合わせた年収の1/3以下の貸付
いわゆる「配偶者貸付」です。
本来、自分の収入を持たない専業主婦は消費者金融から融資を受けることはできませんが、例外的に、収入のない専業主婦でも配偶者との年収の合計の3分の1までの金額を消費者金融から借り入れることができるとしたのが、配偶者貸付制度です。
この制度を利用する場合には、
- 配偶者の同意書
- 配偶者との婚姻関係を証明できる書類(住民票や戸籍抄本など)
の提出が必要です。
ただし、大手消費者金融では配偶者貸付を受け付けておらず、一部の中小消費者金融が取り扱いをしているにとどまっています。
個人事業者に対する貸付
個人事業主が個人向けとしてではなく事業性の資金を消費者金融から借り入れる場合には総量規制の例外扱いです。
その場合、
- 事業計画書
- 収支計画書
- 資金計画書
- 確定申告書
などの書類を提出するよう消費者金融側から求められることもあります。
これらの資料にもとづき返済能力があると認められた場合のみ、総量規制の例外貸付で消費者金融から融資を受けることが認められます。
消費者金融のおまとめローンは総量規制対象外!
「顧客に一方的に有利になる借り換え」である消費者金融のおまとめローンは、総量規制対象外の借入となっています。
本来なら、消費者金融では総量規制の制限によって年収の3分の1までの金額しか借りられないのですが、以下の条件を満たす場合には総量規制対象外の取引として年収の3分の1を超える金額を借り入れることが認められるのです。
- おまとめ前より金利が低くなること
- おまとめ前より毎月の返済額が少なくなること
ただし、確実に返済できると認められなければもちろん消費者金融からは借入できませんし、消費者金融のおまとめローンは返済専用商品ですから、いったん借入したらあとは返済するだけで、繰り返し消費者金融から借入することはできません。
多重債務者をこれ以上増やさないようにとの目的で導入された総量規制ですが、ただ厳しく借入金額を制限するだけではなく、柔軟な規定が盛り込まれていることが分かります。
クレジットは要注意!カードのショッピング枠のみ総量規制対象外
消費者金融だけではなく、クレジットカードも実は総量規制には大いに関係があります。
クレジットカードには、
- 買い物やショッピングに利用できるショッピング枠
- 現金の借り入れができるキャッシング枠
がありますが、このキャッシング枠は貸金業法が適用されるため総量規制の対象です。
一方、クレジットカードのショッピング枠はいわゆる「立て替え払い」で、割賦販売法が適用されます。
貸金業法が適用されるわけではありませんので、クレジットカードのショッピング枠は総量規制対象外なのです。
おわりに
総量規制は全ての消費者金融に適用されますので、総量規制対象外となる消費者金融業者はありません。
しかし、緊急性の高い借入については総量規制対象外の取引として認められているものもあるのです。
総量規制対象外の取引についての知識があれば、緊急でお金が必要になったときでも、消費者金融からはもうすでに借り入れがあるからこれ以上は貸してもらえるはずがない…とあきらめなくても済みますね。