賃貸住宅から退去する際に過大な退去費用を請求されてびっくりした…
そんな話をよく聞きます。
退去費用にはこれといった相場がありませんので、修繕費用にこれだけかかりますといわれてしまうと確かに反論しづらいですよね。
しかし、実は入居者が負担すべき費用は、国のガイドラインにも示されているといいます。
高額になりがちな賃貸住宅の退去費用をできるだけ抑えたい!そのためにはどうしたらよいのか、一緒に考えてみましょう。
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賃貸住宅から退去する時には退去費用を請求される
引っ越しなどで賃貸住宅から退去する場合には、退去費用が発生するのが一般的です。
高額な退去費用を請求されたなどという話を聞くと不安になってしまいますが、退去費用ってどんな基準で決定され、どのように支払うものなのでしょうか?
退去費用は敷金から差し引かれる
通常、賃貸住宅の契約をする際には初期費用として不動産会社に敷金や礼金を納めます。
敷金というのは、部屋を借りる時に部屋の貸主に預けておく担保のようなものだと考えてください。
万一部屋の借主が家賃を滞納した、不注意によって部屋をキズつけてしまった、という場合には、敷金が損害の回復のための費用として充てられます。
したがって、引っ越しなどで部屋を引き払う時の退去費用も、基本的には敷金から差し引かれます。
一方の礼金ですが、こちらは文字通り、部屋を貸してくれる大家さんに対する感謝の気持ちとして支払われるお金です。
お礼として納めるお金ですから、担保として預けている敷金とは異なり、部屋を退去する場合に戻ってくることはありません。
基本的には敷金は戻ってくる!
部屋を退去する時には、敷金から修繕費用として退去費用が差し引かれた残りのお金が戻ってくることになっていますが、この時によくあるのが退去費用のトラブルです。
敷金を大幅にオーバーする退去費用を請求されても、これだけの修繕費がかかるといわれてしまうと、借主としては実際に退去費用がいくらかかったのか調べることは困難です。
借主には原状回復義務があるから、と過大な退去費用を要求する貸主がいますが、それはルール違反だということをぜひ知っておきましょう。
原状回復とは、部屋を借りた当時の状態に戻すことではないことが明確化されています。
部屋の貸主と借主、お互いが退去費用に関するルールをよく理解することが重要ですね。
普通に生活していて、故意や過失によって部屋を傷つけたり汚したりしていないのであれば、退去費用はほとんど発生しないので敷金は戻ってきます。
退去費用の相場っていくらくらいなの?
退去費用に相場というものがあれば、過大な退去費用を請求された場合に対処できそうですが、では退去費用の相場って、一般的にはいくらぐらいなのでしょうか?
退去費用はケースバイケース!明確な相場はない
実は、退去費用にはこれといった相場はありません。
部屋の借主がどのように部屋を使用したかによって退去費用は大きく異なるからです。
普段からこまめに掃除などをして、丁寧に部屋を使っていれば退去費用は少なく済みますし、不注意で壁や床を大きくキズつけてしまうようなことがあれば退去費用はどうしてもかさんでしまいます。
ところが、部屋の貸主と借主の間で原状回復に対する認識がズレていると、退去費用のトラブルが起こりやすいです。
ハウスクリーニング代は退去費用に含まれるのが基本
最近では、退去時のハウスクリーニングは部屋の借主が負担するという特約をつけている物件が非常に多いので、ハウスクリーニング代は退去費用の一部として敷金から差し引かれるものと考えておいた方がよさそうです。
従って、
退去費用=ハウスクリーニング費用+故意・過失による修繕費用
あえていうなら、これが退去費用の相場だといえるでしょう。
また、ハウスクリーニング代の相場ですが、これも物件の所在地や広さなどによって異なりますので、この間取りならこの金額!という基準はありませんが、目安としては以下の通りです。
ワンルーム~1DK | 25,000円~35,000円程度 |
---|---|
1LDK~2LDK | 30,000円~70,000円程度 |
3LDK~4LDK | 50,000円~100,000円程度 |
通常の生活でできるキズや汚れは貸主負担
故意や過失によって部屋を汚したり傷つけたりした場合には、部屋の借主に原状回復義務がありますが、通常に生活していて生じる損耗や経年劣化などについては、借主にその修繕費用の負担義務はないというのが原則です。
通常の生活でできるキズや汚れというのは、例えば、
- 家具や家電を置いた時にできる跡
- 床や壁の日焼け
- 画びょうの穴
などです。
通常の生活内でのキズとはみなされないものは借主負担!
経年劣化や自然な消耗によるもの以外、つまり過失や故意によってできてしまった傷や汚れは借主が修繕しなければなりません。
例えば、
- タバコのヤニによる汚れ・こげ跡
- 家具の移動でつけてしまったキズ
- クギを打った穴
などは借主に原状回復責任があります。
画びょうでポスターを壁に留める程度では下地ボードにはほとんど影響はありませんから、借主が修繕費用を負担する必要はありません。
しかし、壁に打ったクギの穴については、重量物などを掛けるために開けて下地ボードの張替えが必要なほど損傷している場合には、借主が修繕費用を負担しなければならないとされています。
また、日常の掃除などを怠っていたために発生してしまったカビやシミなども、借主が修繕費用を負担しなければなりません。
カビやシミなどは、周期的にメンテナンスをしていれば防げるものだからです。
こんな場合はどちらが負担する?
通常損耗や経年劣化によるキズや汚れは貸主負担、故意や過失によるキズや汚れは借主負担になる、と線引きされていることは分かりました。
そこで、
- こんな場合はどちらが修繕費用を負担するべき?
- 敷金から退去費用として差し引かれたけど、支払わなくてはいけないの?
というケースについて説明をしていきたいと思います。
玄関の鍵
鍵の交換費用は原則として貸主が負担します。
ただし、
- 借主の過失などによって破損してしまった場合
- 退去時には借主が鍵の交換費用を負担すると契約書に明記してある場合
は、借主が負担します。
お風呂・トイレ・洗面台
お風呂、トイレ、洗面台などは水アカやカビが発生しやすく、退去時に特に重点的にチェックされる場所だといえます。
通常使用の範囲内で発生するカビ程度なら、本来は貸主に原状回復義務があるのですが、水アカやカビがあると手入れ不足だと判断され、退去費用として修繕費用を差し引かれることも多いです。
お風呂のタイルやパッキンなどのカビやトイレの黒ずみなどは、定期的に専用洗剤で掃除をすればキレイになります。
退去費用を抑えるためには、普段からカビが発生しないようにこまめに手入れしておくべきですね。
また
- お風呂を空だきして壊してしまった
- うっかりぶつけて洗面台の鏡を割ってしまった
- 不注意でトイレのフタを割ってしまった
など、借主の過失によって発生した損傷は、もちろん借主自身が修繕費用を負担しなければなりません
キッチン・換気扇
キッチン周りもお風呂やトイレなどと同じようにキズや汚れが発生しやすい場所だといえるでしょう。
特に注意したいのが油汚れです。
一見しただけでは分かりにくいですが、キッチンの壁には大量の油が飛び散っていますし、触ってみると換気扇の内側にはかなり油汚れがこびりついていることが分かります。
これをこのまま放置して退去するとクリーニング代を請求されてしまいますので気をつけてください。
キッチン周りの油汚れも、お風呂やトイレなどと同じように定期的に掃除をしていれば汚れは蓄積しにくいです。
その他、よく問題になるのが冷蔵庫の後ろの壁の熱焼けです。
退去する時に冷蔵庫を移動させると壁が変色していることがありますが、冷蔵庫の熱による熱焼けは基本的に借主が修繕費用を負担する必要はありません。
ただ、壊れかけの冷蔵庫を使っていて壁を焦がしてしまったような場合だと退去費用として請求されることもあります。
エアコン
備え付けのエアコンは、通常使用していて故障したものや明らかに古くなって故障したものについては貸主が修理費用を負担します。
ただ、
- 借主がエアコンの掃除を怠っていたために不具合が生じた
- 誤ってリモコンを壊してしまった
などという場合は退去費用として借主が修繕費用を負担します。
なお、退去時のエアコンクリーニングはどちらが負担するかについてですが、入居者が退去する時にはエアコンクリーニング代を退去費用として徴収する旨契約書に書かれていれば入居者が負担します。
契約書にエアコンクリーニング代についての取り決めがない場合は貸主が負担します
壁紙・クロス
退去費用についてのトラブルで最も多いのが、壁紙やクロスの張り替えについてです。
壁紙やクロスの張り替えは最もトラブルが起きやすい!
壁紙やクロスは部屋全体に占める割合が多いのでどうしても目に付きやすい部分だといえます。
また、それなりに手入れをしていても、退去時に家具などを搬出した後に改めて部屋を見回してみると住んでいた時にはわからなかった汚れがあることに気がつくものです。
しかし、少し説明したように、太陽光による日焼けや画びょうの穴、冷蔵庫の後ろの熱焼けなどは通常に生活をしていて発生する損耗ですから、貸主が修繕費用を負担します。
逆に、物をぶつけるなど過失によってできた剥がれ、クギ穴、タバコのヤニなどによる損傷は借主が退去費用として修繕費を負担しなければなりません。
退去費用として負担しなければならないのは修繕が必要な部分のみ
壁紙やクロスは意外と汚れがつきやすく、またちょっとしたことで傷つきやすいですが、もし壁紙やクロスに傷をつけてしまった場合でも、部屋全体の壁紙を貼り替えなければならないわけではないと覚えておくとよいでしょう
借主が負担しなければならないのは、修繕が必要な部分の壁紙やクロス1面分のみです。
1面分の張り替えでは残りの壁面と色が異なってしまうので部屋全体のクロスを張り替えするという場合は、残りの部分の張り替え費用は部屋の貸主が負担します。
フローリング・クッションフロア
日常の生活でつく細かいキズやヘコミや太陽光による日焼けは貸主が修繕します
家具などを置いた場合に床のヘコミは通常の使用でついてしまうものですので、借主が修繕費用を負担する必要はありません。
ものを落としてできてしまった大きな傷やヘコミなどは借主が退去費用として修繕費用を負担しますが、よほど大きな傷でない限りは補修で済むことが多く、部屋全体のフローリングを張り替えるということはないでしょう。
ふすま・障子・畳
ふすまや障子、畳も通常損耗であれば借主が取り替えをする必要はありません。
ただし、借主の不注意でふすまや障子に穴を開けてしまった、タバコで畳を焦がしてしまったなどという場合には、もちろん借主が修繕負担義務を負うことになります。
この場合も、壁紙やクロスと同じように、借主は損傷してしまった部分の交換費用のみを負担します。
他の畳と色のバランスが取れなくなってしまうからという理由で、一部屋分の畳全部の費用を負担するよう請求してくることがありますが、借主が負担しなければならないのは汚してしまった畳一枚分の費用のみです。
退去費用に関する国土交通省のガイドラインを参考に!
部屋の貸主と借主との間で原状回復義務に関する認識にズレがあると退去費用のトラブルが発生しやすいです。
確かに、どちらがどのくらいの修繕費用を負担しなければならないのかを厳密に決めるのは大変に難しいですよね。
基本的には国交省のガイドラインが適用される
もし、貸主から請求された退去費用が高額すぎるのではないかと感じたら、退去時の原状回復をめぐるトラブルを未然に防止するために国土交通省が発表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にするとよいでしょう。
このガイドラインには法的な拘束力はありませんので、実際には契約内容が優先されます。
しかし、国交省のガイドラインは、原状回復費用の負担について過去の判例などをもとにまとめられていますし、多くの物件がこの基準に従って契約を締結しています。
もし、契約内容があまりにもガイドラインからかけ離れている場合には、貸主に対してガイドラインを提示して交渉をしてみてください。
長く住めば住むほど退去費用は少なく済む?
賃貸住宅の原状回復義務については、
- 借主の故意や過失によってついた傷や汚れは部屋の借主が修繕費用を負担する
- 通常の生活でついたキズや汚れは部屋の貸主が修繕費を負担する
と説明しました。
ただ、必要以上の退去費用支払わないために、これ以外にもう一つしっかり注目してほしい点があります。
それは、国交省のガイドラインが、賃貸住宅の設備は時間が経過するとともにその価値が下がっていくとする考えを採用していることです。
住宅の設備には耐用年数があり、一定の期間を過ぎてしまえば設備そのものの価値がなくなってしまいます。
ガイドラインでは、設備の交換費用を借主に請求する場合には全額を請求するのではなく、借主が入居していた年数を考慮して請求するべきだとしています。
ガイドラインで示されている主な設備の耐用年数
国交省のガイドラインで示されている設備や内装の耐用年数は以下の通りです。
耐用年数5年 | 流し台 |
---|---|
耐用年数6年 | エアコン、冷蔵庫、ガスレンジ、インターホン クロス、カーペット、クッションフロア |
耐用年数8年 | 金属製以外の家具(タンス、書棚など) |
耐用年数15年 | 便器、洗面台などの給排水・衛生設備、金属製の器具や備品 |
建物の耐用年数が適用されるもの | ユニットバス、浴槽、建物と一体型の下駄箱 フローリング |
ガイドラインの基準に従えば、クロスや備え付けのエアコンなどは6年以上使用すれば残存価値はほぼなくなると考えられています。
従って、6年以上入居した場合は退去時にクロスにキズや汚れがあったとしても、またエアコンが故障してしまっていても借主が負担することはありません。
つまり、入居年数が長いほど退去費用を低く抑えられるのです。
退去費用が払えない!退去費用の分割払いってできるの?
退去費用が高くて一度には支払えない!
そのような場合、退去費用を分割払いにできるのでしょうか?
退去費用が高すぎないかチェックする
まずは、一度に支払えないほど退去費用が高額になった理由を明らかにしましょう。
通常、退去時に請求される退去費用は入居契約時に納めた敷金から相殺されますので、普通の生活をしていれば支払いができないほど高額な退去費用を請求されることはないはずです。
それでも退去費用が高額になる理由としては、
- 故意や過失によって設備などを損壊してしまった
- 敷金不要物件なのでそもそも敷金を支払っていない
- 契約に修繕費用を負担する特約が含まれていた
などが考えられます。
元々敷金を納めていない場合は、退去費用を実費で負担しなければなりませんし、過失によって高価な設備を壊してしまえば修繕費用が高くつきます。
このような場合には退去費用は大きな金額になる可能性があります。
退去費用に納得できるなら分割払いをお願いしてみる
退去費用が高額になってしまった理由には納得しているけども、どうしても退去費用を一度に支払うのが難しい、という場合は管理会社や貸主に退去費用の分割払いができないか頼んでみましょう。
率直にいって、退去費用の分割払いには対応してもらえないケースが多いですが、しっかりとした返済計画を提示して交渉すれば応じてくれる可能性がないとはいえません。
少数派ではありますが、大東建託など退去費用のクレジット払いを受け付けている不動産会社もあることも知っておくとよいでしょう。
退去費用を払わないとどうなる?
退去費用が高額だからといって払わないでいるととどうなるでしょうか?
一般的には、借主が退去費用を払わないままでいると、入居契約時の保証人に退去費用を支払うように連絡が入ります。
話がこじれてしまえば、訴訟相続に発展してしまう可能性もあるでしょう。
ただ、国交省のガイドラインの基準を無視した高額な退去費用に関しては、借主が有利になるようなしくみになっています。
退去費用が高すぎるからと支払わないままでいるよりは、ガイドラインを提示するなどして管理会社や貸主と交渉する方が得策だといえます。
退去費用を抑えるコツってある?
高額になりがちな退去費用を、何とか抑えるコツのようなものってあるのでしょうか?
入居時には部屋の写真を取っておく
退去費用を抑えるために効果的なのが入居時のチェックです。
入居前からあったキズや汚れの修繕費用まで負担してしまうことがないように、家具を運び混んでしまう前に部屋をしっかり観察して、キズや汚れがあれば全て書き出しておきましょう。
日付の入るデジカメなどで撮影をしてプリントアウトをしておくことも忘れないでください。
一通り確認が終わったら、管理会社や貸主にもキズがあることを伝えて確認をしてもらうことです。
チェックしたメモや写真を余分にコピーして管理会社や貸主に提出しておけば、退去費用を算定する時の重要な証拠になります。
契約書の内容をよく確認しておく
入居の契約をするときは、契約書の内容をよく確認しましょう。
特に、特約条項には借主にとって不利な条件が盛り込まれていることも多いので要チェックです。
また、退去費用についての取り決めなどについて分からないことがあれば、契約前の段階で遠慮なく管理会社や貸主に質問をしてみてください。
きちんとした管理会社や貸主なら、ガイドラインに沿った内容でしっかり説明してくれるはずです。
管理会社や貸主が、修繕費用の負担割合についてあいまいな返答しかしてくれないようであれば、入居の契約自体を見送った方がよいでしょう。
故意や過失によるキズには気をつけよう!
退去費用を抑える一番の方法は部屋を丁寧にキレイに使用することです。
日頃からこまめに掃除をし、汚れなどを放置しないようにしましょう。
例えば、ちょっとしたキズやクロスの剥がれなら、市販の修理キットを使えばほとんど分からないように補修できますが、それを放置したままでいると破損が大きく広がってしまいます。
退去費用は、少し気をつけてメンテナンスをするだけで大きく抑えることも可能です。
普段から気をつけて常に部屋をキレイにしておきましょう。
退去費用のことで困ったらまずは相談窓口へ
- 退去費用を過大に請求されているのではないか?
- 退去費用が高額でとても支払えない…。
退去費用のことで困りごとが発生したときは、専門機関の相談窓口を頼ってください。
一人でどうしようか悩んでいるよりも専門機関に相談する方が問題を早く解決できます。
退去費用に関して無料で相談できる窓口をご紹介しますので、ぜひ活用してください。
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おわりに
退去費用に関して、部屋の借主が負わなくてはならない責任の範囲って実はそれほど広くはないんですね。
しかし、こうしたことは不動産業者や大家さんでさえ知らないこともあるんです。
以前からずっとこれだけの退去費用を皆さんに負担してもらっているから、と悪気なく請求してくる大家さんも確かにいます。
しかし、本来支払う必要のない分までこちらが退去費用として負担する理由はありませんので、ぜひ正しい知識をもとに交渉を進めていってください。
部屋を退去するということは、新生活がスタートするということでもあると思います。
この記事が少しでも役に立って、すっきりとした気持ちで新しい生活を始められますように。